「女性蔑視だ」と指摘を受けたテレビ朝日の報道番組「報道ステーション」のウェブCMが24日、削除された。「ジェンダー平等をかかげるなんて時代遅れ」といったセリフがあり、「女性や若者を見下している」などの批判が噴出。どこが問題だったのか。英文学が専門で、女性の労働の表象に詳しい専修大学の河野真太郎教授に聞いた。(聞き手・デジタル編集部 三輪喜人)
◆意図がわかりにくいCM
CMはユーチューブやツイッターで公開していた。ユーチューブ版では、帰宅した若い女性が「会社の先輩、産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど、もうすっごいかわいくって。どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的にかかげてる時点で、何それ、時代遅れって感じ」と笑う。
さらに、「化粧水買っちゃったの。もうすっごいいいやつ。それにしても消費税高くなったよね。国の借金って減ってないよね?」と語った後、画面に「こいつ報ステみてるな」との文字が示される内容だった。
河野さんは「上から目線で、女性や若者を馬鹿にしていることがにじみ出ている。よくある古い価値観による女性蔑視ではなく、意図や視点がわかりにくいCMだ」と指摘。SNSで批判があふれたのは、「直感的に気持ちが悪いと感じるからだろう」とみる。
CMでは、「時代遅れ」という言葉が、子連れで職場復帰した先輩にふれた直後に続くことで、「ハッピーに働き、暮らしていてジェンダー平等はもう達成されている。掲げることがダサいというメッセージを発している」と分析する。
◆「普通」の女性を見下している
しかし、男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数の2020年版で、日本は153か国中121位。男女格差が大きく、平等とは程遠いのが現状だ。
さらに先輩の姿は、保育園に入れなかったことや、産後すぐにも働かなければならないといった雇用や労働の問題を遠ざけてしまっていると河野さんはみる。
「物事をわかっていないような『普通』の若い女性が、実は一番世の中のことをよく分かっているという構図だが、『普通』はこのくらいだと見下している。ただ、制作者が差別をしようとCMをつくるわけがない。『普通』の女性に寄り添うとの意図で、新しいものを作ろうと思ったのかもしれないが、結果的には内容も演出もうまくなかった」と説明する。
化粧水の登場にも注目し、「きれいな肌が良いというのは、典型的なルッキズム(外見至上主義)だ。女性は肌のケアに投資するものだとのメッセージになってしまった」と指摘する。
◆お題目はいいから、女性は働いて消費して
「#MeToo」運動の高まりや、森喜朗元首相の女性蔑視発言などを受けて、これまで見過ごされてきた差別発言を看過しない雰囲気が出てきたといい、「一部の男性が面倒な社会になってきたという反応をするかもしれないが、その何倍も面倒くさいことを女性が受けてきたのだから、そこは理解すべきだ」という。
近年、雇用環境は流動化し、非正規の派遣労働が増えた。新型コロナウイルスの流行で、追い詰められる女性は少なくない。
「安倍政権下で女性活躍が推進されたが、女性の地位向上のためというよりは、女性を労働力として捉えていた。このCMも、ジェンダー平等とかお題目はいいから、女性は働いて消費してという内容。アベノミクスの女性活躍の延長線上にある」と話している。
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