フジテレビの番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレスラーの木村花さん(当時22歳)が昨年5月に命を絶った問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は30日、フジ側に「出演者の精神的な健康状態に対する配慮に欠けていた点で放送倫理上の問題があった」とする見解を公表した。ただし「人権侵害があったとまでは断定できない」との結論を示した。
「テラスハウス」は、若い男女6人が番組が用意した家で暮らし、恋の駆け引きなどを見せる「リアリティー番組」の一種。
同委員会は、同種の番組はドラマやドキュメンタリーと違い、「視聴者の共感や反発は出演者に向かう」と指摘。さらにSNSが普及する中、出演者の言動について、様々なコメントを共有することが視聴者の楽しみ方となっている現状も踏まえ、「リアリティー番組の出演者が誹謗中傷によって精神的負担を負うリスクは格段に高い」と言及。花さんが精神的に不安定になった後も制作責任者は直接連絡することがなかったなど、フジの対応は「問題の深刻さの認識に甘さがあった」と批判した。
ただ、同委員会は過剰な演出があったとする申し立てについては、フジ側のスタッフの強い影響力があったことは想像できるものの、花さんの意思決定の自由を奪うほどではないとして、自己決定権などの侵害は認められないとした。
花さんへの中傷が始まるきっかけは、共同生活していた男性を花さんが叱るシーン。昨年3月、動画配信サービス「Netflix(ネットフリックス)」で先行配信された後、SNS上で中傷が相次いだ。しかし、フジは5月に同じ回を放送し、花さんはその4日後、自ら命を絶った。
母親の響子さん(44)は昨年7月、花さんを凶暴な女性のように描く「過剰な演出」などで人権侵害があったと、同委員会に申し立てていた。
フジテレビは「今回の決定を真摯に受け止め、今後の放送・番組作りに生かしてまいります。番組制作に伴うSNS上の対策や課題については新設したSNS対策部門を中心に組織的に取り組んでいく所存です」とのコメントを発表した。
砂川浩慶・立教大教授(メディア論)の話「SNSで中傷が相次いだ今回の問題について、放送に焦点を当てるBPOの調査は限界がある。さらなる悲劇を生まないためにも、BPOは放送の枠を超え、インターネットの世界とも連携する必要性がある。また、若者の間では、テレビ番組の虚実がない交ぜになり、SNSで瞬時に反応してしまう人もいる。リアリティー番組はフィクションであることを表示するような具体策も必要ではないか」
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BPOの見解公表を受け、木村花さんの母親の響子さんが30日、東京都内で記者会見を開き、「人権侵害が認められず、歯がゆく悔しい」とうなだれた。
主張が認められなかったことについて、「花がいないことで事実を証明することが難しく、不利な結果にしかならないんだと思った。今回の結果は時代に追いついていないと感じた」と苦しい胸の内を吐露した。
また、フジに対しては、「自分たちの番組作りを見直して、出演者を駒の一つではなく、一人の人間として、大切に扱っていただきたい」と注文をつけた。
一方、SNS上の誹謗中傷をなくすため啓発を行うNPO法人「リメンバー ハナ」を設立することも発表した。
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