「サクラ大戦」のライブコンサート「新サクラ大戦 the Stage ~桜歌之宴~」が3月21日、開幕した。3月18日に実施されたゲネプロを観覧してきたので、その模様をお届けしたい。昼公演のサプライズとして、秋には追加公演が実施されることも明らかになった。ライブはdアニメストアで視聴可能で、料金は3,800円(税込)より。チケット購入者は3月28日いっぱいまでアーカイブ配信を視聴できる。なお、曲の内容に触れるために、「新サクラ大戦」本編の若干のネタバレがあるので、ご注意いただきたい。
「新サクラ大戦 the Stage」は、2019年12月に発売された「新サクラ大戦」の舞台化作品。今回開催された「新サクラ大戦 the Stage ~桜歌之宴~」はその人気を受けての同一キャストによる1日限りのライブコンサートとなる。
「新」から「サクラ大戦」のファンになったユーザーには、こうした動きは近年増えてきたメディアミックス的な展開に見えているかもしれないが、「サクラ大戦」こそゲームの舞台化の先駆け的存在だ。往年の「サクラ大戦」ファンなら、かつて日本武道館を満杯にしたサクラ大戦歌謡ショウが「新サクラ大戦」と共に復活したというと伝わりやすいかもしれない。
旧「サクラ大戦」の舞台との最大の違いは、旧サクラ大戦が、キャラクターの声をあてた声優がそのままキャストとして参加していたのに対し、この「新サクラ大戦 the Stage」では、このために選抜されたキャスト5人による、ゲームとはまた別軸のステージになっていることだ。
横山智佐さん(真宮寺さくら役)や田中真弓さん(桐島カンナ役)、日髙のり子さん(エリカ・フォンティーヌ役)といった歴代のレジェンドたちが一堂に介してキャラクターそのままの出立ちとボイスで展開されるステージはそれ自体が一種の伝説で、ある意味ゲーム以上に舞台に力を注いでいた総合プロデューサーの広井王子氏の努力の賜と言えた。
「新サクラ大戦 the Stage」ではゲーム同様広井王子氏がプロデューサーを外れたこともあり、このシステムを辞め、ゲームの声優とは別にキャストを起用し、新たな「新サクラ大戦」の世界を創造している。
新曲「舞台の神様」や「サクラ大戦」シリーズの楽曲を含む全20曲
さて、前回は舞台、今回はライブということで、セットリストも豪華絢爛となった。まずはセットリストからご覧頂きたい。
【「新サクラ大戦 the Stage ~桜歌之宴~」セットリスト】
M01:檄!帝国華撃団<新章>(新サクラ大戦) / 天宮さくら、東雲初穂、望月あざみ、アナスタシア・パルマ、クラリス
M02:スタア誕生(新サクラ大戦) / 天宮さくら、東雲初穂、望月あざみ、アナスタシア・パルマ、クラリス
M03:女!!祭りの心意気(新サクラ大戦)/ 東雲初穂
M04:忍者あざみ(新サクラ大戦) / 望月あざみ
M05:帰れる場所(新サクラ大戦) / アナスタシア・パルマ
M06:輪舞(新サクラ大戦) / クラリス
M07:乙女なんですよ(新サクラ大戦) / 天宮さくら
M08:桜夢見し(新サクラ大戦 the Animation) / 天宮さくら、東雲初穂、望月あざみ、アナスタシア・パルマ、クラリス
M09:宝島(帝国歌劇団・花組 スーパー歌謡ショウ「新宝島」) / 東雲初穂、アナスタシア・パルマ
M10:つばさ(サクラ大戦歌謡ショウ・ライヴ~帝国歌劇団第2回花組特別公演) /望月あざみ、クラリス
M11:春よ来い春よ(サクラ大戦奏組 ~薫風のセレナーデ~) / 天宮さくら
M12:銀座行進曲(サクラ大戦スーパー歌謡ショウIII『新西遊記』) / 天宮さくら、東雲初穂、望月あざみ、アナスタシア・パルマ、クラリス
M13:花咲く乙女(サクラ大戦) / 天宮さくら、東雲初穂、望月あざみ、アナスタシア・パルマ、クラリス、神崎すみれ
M14:舞台の神様(新サクラ大戦 the Stage ~桜歌之宴~) / 神崎すみれ ※新曲
M15:(昼)恋の発車オーライ!(サクラ大戦2) / 芽組
(夜)あたし泣いちゃいます(サクラ大戦・ソングボックス) / 芽組
M16:奇跡の鐘(サクラ大戦2、新サクラ大戦) / 天宮さくら、東雲初穂、望月あざみ、アナスタシア・パルマ、クラリス
M17:夢のつづき(サクラ大戦2) / 天宮さくら、東雲初穂、望月あざみ、アナスタシア・パルマ、クラリス
M18:花の戦士(サクラ大戦 ~熱き血潮に~) / 天宮さくら、東雲初穂、望月あざみ、アナスタシア・パルマ、クラリス
M19:新たなる(新サクラ大戦) / 天宮さくら、東雲初穂、望月あざみ、アナスタシア・パルマ、クラリス
M20:檄!帝国華撃団<新章>(新サクラ大戦) / 天宮さくら、東雲初穂、望月あざみ、アナスタシア・パルマ、クラリス、神崎すみれ
全20曲、ノンストップの約100分。前回の舞台は、演劇パートが長め、歌唱パートが少なめの配分だったが、今回は歌唱のみ。合間に神崎すみれや、芽組によるトークや、衣装チェンジはあるものの、たっぷり「サクラ大戦」を愉しめる。この仕上がりにはゲネプロを訪れていた田中公平氏も大満足だったようだ。
本日、ゲネプロでした。
もう、何と言うかボリュームたっぷりのノンストップな
中身の濃い宴です!客席側の関係者さんとお話したのですが、
役者さん達のパワーが半端無いのは
『若さ』だよなぁ〜って。必ず!ご期待にそえると確信しました。
— 田中公平@今が『旬』 (@kenokun)March 18, 2021
「新サクラ大戦」からは、主題歌「檄!帝国華撃団<新章>」を皮切りに、エンディングテーマ「新たなる」、そして各キャラクターのテーマソング、「新サクラ大戦 the Animation」エンディング主題歌「桜夢見し」まで主要曲はすべて盛り込みつつ、田中公平氏の肝いりで歌謡ショウからの復刻、そしてファン投票で旧シリーズの名曲も復活している。
歌謡ショウからは「宝島」、「つばさ」、「春よ来い春よ」、「銀座行進曲」の4曲が盛り込まれており、当時の振り付けを再現。歌謡ショウ派の「サクラ大戦」ファンも満足させる内容となっている。
「サクラ大戦」シリーズファンとして嬉しかったのは、その他のシリーズ作品からも数多く人気曲が盛り込まれていたところだ。初代「サクラ大戦」のエンディングテーマ「花咲く乙女」から、いまや「ゲキテイ(檄!帝国華撃団)」に勝るとも劣らない人気を誇る「花の戦士」まで、珠玉の帝国華撃団ソングがてんこ盛りだった。田中氏によると、今回は帝都が対象ということで、巴里(パリ)や紐育(ニューヨーク)は次回以降にお預けとなる。
筆者は前回の11月の舞台から2度目の観覧となったが、天宮さくら役の関根優那さんをはじめ5人とも歌や踊りが前回より洗練されていただけでなく、それぞれが“自分の歌”にしていたのが印象的だった。「新サクラ大戦」でいえば、天宮さくら役の声優 佐倉綾音さんの声域に合わせた超高音が特徴だが、関根さんは綺麗に乗り切っていたし、「サクラ大戦」の新たな代表曲である「花の戦士」も、最初から彼女たちの曲であるかのような威風堂々とした歌いっぷりだった。当日のライブでも大いに盛り上がるだろう。
「サクラ大戦」待望の新曲は、神崎すみれ総司令の「舞台の神様」
そして今回、ライブ全体の演出面で際立っていたのは、やはり新曲だろう。この新曲の存在は田中公平氏が自らTwitterで明らかにしていたが、誰に向けた曲なのかは明らかにしていなかった。当然、帝国華撃団花組に向けたものだと思われていたが、そうではなく帝国華撃団総司令の神崎すみれの曲だった。
その伏線は、その手前の曲、「花咲く乙女」に花組の5人に神崎すみれも加わり6人で歌っていたことだ。神崎すみれは、旧帝国華撃団花組のメンバーであり、ゲームでは新と旧を繋ぐ役割を担ったキーパーソン。神崎すみれは旧シリーズでは、高飛車なトップスタァとして主人公を困らせ、真宮寺さくらに並ぶ人気キャラクターだったが、新シリーズでは1人で孤軍奮闘するひたすらツラい役回りを演じている。
「新サクラ大戦」のエピローグでは、世界平和を取り戻した帝国華撃団総司令の神崎すみれが、「奇跡の鐘」を自室で1人で歌うシーンが「サクラ大戦」ファンの涙を誘ったが、初公開された新曲「舞台の神様」は、そんな神崎すみれ自身が、往年のトップスタァ時代を懐かしむような優しいバラードになっている。
現役時代は「なやましマンボ」(サクラ大戦)に「絶対運命のタンゴ」(サクラ大戦2)と、激しく積極的なラブソングばかりだったが、「舞台の神様」は元トップスタァ、現大帝国劇場支配人らしい落ち着いた曲となっている。神崎すみれを演じる片山萌美さんの優しくも凛とした歌声に、芽組の美しいハーモニー。「サクラ大戦」の新たな人気曲の誕生だ。
最後に、個人的な感想になってしまうが、神崎すみれが活躍した初代「サクラ大戦」、「サクラ大戦2」の名曲たち、そして新曲「舞台の神様」が歌われたことによって、ゲームで理不尽なまでにツラい役目を背負わされた神崎すみれが少し救われたのではないかということと、田中公平氏の「サクラ大戦」の名曲たちが、姿形を変えて新しい世代に引き継がれたのは「サクラ大戦」ファンとしてとても良かった。今回のライブの模様はdアニメストアで有料視聴できるほか、秋には再演されるということなので、うっかりライブに行きそびれた「サクラ大戦」ファンは次回こそぜひ会場まで足を運ぶことをオススメしておきたい。
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