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「紬のような川口春奈が見たかった」「目黒蓮の芝居を見て、“大器が来た”と思った」――「silent」村瀬健プロデューサー×脚本・生方美久インタビュー【後編】 - tvguide.or.jp

 川口春奈さん主演でおくる本格ラブストーリー「silent」(フジテレビ系)。ドラマ放送前にもかかわらず、Twitterのフォロワー数が20万人を超えたことも記憶に新しい本作が、10月13日放送・第2話を前にフォロワー数30万人を突破。Tverなど見逃し配信での再生回数も過去にないほどの数字をたたき出し、視聴者の関心度がうかがえる。

 さらに、第1話が放送されるとまたたく間にTwitterのトレンドを席巻。「最初の“うるさい”と最後の“うるさい”に泣いた」「最後の紬と想のシーン…(涙)」「脚本が最高すぎる」「あのタイミングで流れるヒゲダン…!」など、絶賛の嵐だった。

 先日お届けした村瀬健プロデューサーと脚本・生方美久さんのインタビュー前編(https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-1801325/)では、本作ができるまでの道のりや本作に懸ける思い、過去に類をみない反響の大きさなどについて話を聞いたが、後編では当て書きをする上で大事にしていることや名前に込めた思い、主題歌などについて熱く語ってもらった。

 青羽紬役の川口さんと佐倉想役・目黒蓮さんをキャスティング、そして当て書きするにあたり参考にした動画について聞くと、村瀬プロデューサーの作品愛、川口さん、目黒さんに対する愛があふれだした。

村瀬 「最初のリリースの時にも言ったんですけど、僕はラブストーリー全盛期の“月9”の時代からドラマを見て、そして自分も“月9”を作ってきた人間。やっぱりラブストーリーといったら、“誰と誰が”っていうのがすごく大事だと思うんですよね。もちろん、人気者であればいいというわけでもなくて。僕自身が今、誰と誰でラブストーリーを見たいか…そう考えた時、川口春奈さんと目黒蓮さんの組み合わせで見てみたいと思ったんですよね。これ、みんなも見たくないですか?っていう、そういう感じが始まりでした(笑)。川口さんに関しては、演技はいろんな作品を見て知ってましたけど、今の彼女がまとっている空気感みたいなものがすごくいいなと。僕自身が、ああいう、紬のような川口春奈を見たかったというのが大きいですね」

生方 「私はもう本当ざっくばらんにTwitterとかInstagramで“川口春奈”、“目黒蓮”って検索かけて出てくるものを全部見るって感じでした。自分がドラマや映画が好きでいっぱい見るので、『こういうお芝居するんだな』というのは分かっていたので、SNSで検索して出てくるファンの人が上げたインタビュートークとかを見ていました。今、私のSNSの検索履歴は出演者の人でいっぱいです(笑)」

村瀬 「目黒さんは本当に実直な真面目な…ぼくとつとした雰囲気を持っていますよね。とにかくSnow Manでの活動だけに限らず、芝居している姿を見て、“大器が来た”と思ったんです。役者としてなんかすごい大きな存在になるんじゃないかっていう空気を感じて。そういう2人がラブストーリーをやったら最高のドラマができるんじゃないかと思ってオファーしたんですよね。仕事柄、いつも次に一緒にやりたい役者さんを探しているんですけど、その人の出ている1個の映画を見てとか、あのドラマを見てとかじゃなくて、CMだったりドラマだったり映画だったり雑誌だったり…とにかくいろいろなものを見て総合的に決めてるところが僕にはあるんですよね。そんな感じでいろんなものを見てたら、川口春奈いいな、目黒蓮いいなって思ったんです。ただ、目黒くんに関しては、『消えた初恋』(2021年/テレビ朝日系)に出演しているのを見た時に、『なんなんだこの格好よさは!』と思いました。たまたま仕事をしながら音を出さずに映像だけを見ていたんですけど、(無音で見てるから)声がどうとか、芝居がどうとかじゃなくて、ただただ見ていて、とにかく格好いいなこの人って感じました」

「美男美女じゃない設定だけは許せないって思っていた(笑)」

 当て書きをするにあたり、大事にした部分や絶対に逃したくない部分、この要素だけは絶対に入れたいと思ったことについて、生方さんからはおちゃめな回答が飛び出した。

生方 「たまに、どう見ても美男美女なのに、美男美女じゃない設定のドラマや映画があるじゃないですか。それだけは許せないなっていつも思っていたんです(笑)。なので、2人は高校で一番の美男美女だっていう設定にしているんです。そうした方が見ている側も楽しいんじゃないかなと思って。もちろんドラマだから、ほかのキャストさんも美男美女がそろっているのは当たり前なんですけど、この2人を美男美女の設定にしようというのは最初から決めていました」

村瀬 「そういう感覚が生方美久っていう作家のすごいところだと思っています。(生方さんの)視点がすてきなんですよね。2人を美男美女の設定にしようとか思うのは簡単じゃないですか。彼女の場合、それがちゃんとキャラクター設定やセリフに昇華されてるんです。第2話で出てきますけど、2人が付き合い始めた途端に学校中が失恋パンデミックになった、というセリフがあるんですよね。少し前、SNS用に高校時代の川口さんと目黒くんの2ショット動画を撮ったんです。それが本当にすてきで。僕、みんなに『これ、ヤバくない!?』って見せたりして(笑)。その動画を見ると、俺も紬のこと好きだったのに…じゃなくて、俺はこの2人の友達ってことを自慢できるだけでいいや、みたいな気持ちになるレベルの美男美女なんです(笑)。そういう会話が自然と出てくるような世界線がこのドラマの脚本にはあるんです。だからリアルなんだろうなと思うんですよ。こういう感覚って、今まであんまりなかったかもしれないですね。それがみんなが思う生方脚本のよさの一つかもしれません」

注目してほしいところは、「あの時、あの役者たちがなんと呼び合っているか」

 キャラクターを作る上で、役どころとともに名前も重要なポイントの一つ。生方さんは、それぞれのキャラクターに合わせて紬と想、湊斗と、愛情たっぷりの名前をプレゼントした。第1話では「青羽」「佐倉くん」、そして「湊斗」呼びだったが…。

生方 「それぞれの名前にはいろんな理由があって、つけるのにとても時間がかかりました。今回は紬と想がセットになることが前提にあったので、赤ちゃんの名づけランキングを参考にしながら、漢字の意味とか、それぞれがなんて呼び合うか、呼び合った時の音の響きとかを意識しました。コメディーとかを書くなら突拍子もないキラキラネームをつけたいなって思っちゃうんですけど、今回はラブストーリー。この設定でひかれる視聴者は、きっと20代、30代の女性が多いと思うんですよね。名づけランキングって、親になる人たちが魅力的に思う名前ってことじゃないですか。紬や想、湊斗と同じ26歳の人たちの名づけランキングだと、きっと紬とか想って下の方だと思うんです。でも、今のランキング上位にある名前をつけると、かわいい名前だなって思ってもらえるんじゃないかなって。テレビドラマって、家事とかをしながら音だけ聞いて、気になるところだけ見たりすることも多い。だから、その時にテレビから紬ちゃんって聞こえてきて『いい名前だな』って思ってもらえるかどうか…そして、紬や想という名前が川口さんや目黒さんに合うかどうかが大事だなと思いながらつけました」

村瀬 「僕も普段、役名にはうるさくこだわるんですけど、今回は生方さんから出てくる役名があまりにもよかったので、あっさり受け入れました(笑)。最初の企画書の段階でほぼみんなあの役名でした。想だけは最後までいろいろと検討しましたけどね。これから2人だけじゃなく、それぞれのキャラクターの呼び方が変化していきます。呼び方がもう物語になってるんです。ある仕掛けというか、彼女のこだわりも含めて見どころの一つですね。名前の呼び方に注目して見ていくと、ちょっと楽しめるかもです」

 また、呼び方だけでなく、本作には細かい仕掛けが点在している。第1話の“うるさい”もその一つだが、1、2回見ただけじゃ気が付けないようなところがたくさんありそうだ。

村瀬 「それはそうかもしれませんね。監督たちも僕たちも、あとから『あー、こういう伏線があったんだ』って思うこともあります。第1話のナレーションは紬で、第2話は想、そうすると第3話、4話…はどうなるのか、ってね? 生方さんは初めて連ドラの脚本を書いているわけじゃないですか。おそらく、彼女の中には、いつか連ドラを書くなら第1話はこう、2話はこう、3話は、4話は…というアイデアがあったんでしょうね。別に僕が指示したわけでもないですから。天性の才能というか、センスですよね。そんな彼女ならではのセンスが散りばめられています」

藤原聡さんが連想して生み出した歌詞…これがまたとんでもなく素晴らしい

 そしてドラマと言えば主題歌。どんなタイミングで、どんな音で、どんな言葉で視聴者の耳に訴えかけてくるのか。本作では、Office髭男dismが視聴者をさらに「silent」の世界へいざなう。

村瀬 「ラブストーリーは音楽(でみせるもの)だと思ってるんです。今回も主題歌と音楽にもだいぶこだわりました。第1話の映像が完成する前に、まだ完成しきってなかった段階の『Subtitle』を試しに乗せてみたんです。そしたら、もう、ニヤニヤしちゃって。この曲がかかったらこのドラマを思い出すどころか、恋がしたくなるというか…ラブストーリーのテーマになるような曲を作りたいと思ったんですよね。今回は10月クールで秋から始まり冬へと向かう。最終回の頃にはクリスマス…聖なる静寂の夜に向けて放送回数を重ねていけるドラマなので、主題歌はクリスマスソング、もしくはウインターソングにしたいと思っていたんです。そこも含めて、とんでもない曲ができたと思っています。Office髭男dismさんには最初に企画書を読んでもらって、メンバーの皆さんと直接お会いして打ち合せをさせていただきました。人物相関図も見てもらったりして。普段、曲作りの段階でそんなものを見る機会がないとのことで、興味深そうに相関図を見てくださいました(笑)。そこで、こんなドラマにしたい、だからこんな主題歌がほしいという話をして、そうして作っていただいたのが『Subtitle』でした。うちの脚本家・生方美久の紡ぎ出す言葉も素晴らしいけど、その言葉から藤原聡さんが連想して生み出した歌詞…これがまたとんでもなく素晴らしい。僕、これだけで2時間しゃべれます(笑)。とにかく、やばい化学反応が起こってることだけは確かです」

 また、ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(16年/同系)や「アンナチュラル」(18年/TBS系)で劇伴を担当した得田真裕さんが本作を盛り上げる。村瀬プロデューサーとは映画「約束のネバーランド」(20年)以来のタッグだ。

村瀬 「連ドラにとって主題歌は命だと思っています。でも1時間ずっと流れてるわけじゃない。だから、それ以外の音楽、つまり劇伴もめちゃくちゃ大事だと思ってるんです。得田さんには絶大の信頼を置いています。『いつ恋』でも『約束のネバーランド』でも僕の期待をはるかに越える音楽で、作品のクオリティーを上げてくださいました。今回も、どこまでも心に寄り添う音楽を作ってくださったので、その点もぜひ注目して聴いていただけるとうれしいです。『silent』という音のない世界で生きることになった想と、音のある世界に生きる紬、2人を描くにあたって、音は非常に重要なファクターでもあるので、その意味でも第2話以降を楽しみにしていてほしいですね」

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