ひなた(川栄李奈)が店番を務める回転焼き屋「大月」に、一人の男(本郷奏多)がやって来た。年齢はひなたと同じくらいだろうか。バッグを肩で持つ自信有り気な態度に、相手を蔑むような上から目線と感じの悪い舌打ち。とにかく無愛想で第一印象は最悪、だがどこか憎めなくもある。タイトルバックのクレジットは第71話、第72話と「無愛想な男」のまま。かつての「宇宙人 オダギリジョー」を彷彿とさせる。
彼はどうやら初めての来店ではないらしい。いわゆる、るい(深津絵里)が作った回転焼きのリピーター。だが、店に立っていたのは、ろくに店番もやってこなかったひなたというわけだ。18年間で回転焼きを一度も焼いたことのないひなたもひなただが、目の前にストックがあるのにもかかわらず「この家の娘」ということにつけ込むようにして焼きたてを要求する彼も彼だ。案の定、回転焼きを袋に入れるぎこちない手つきから、彼女の18年間が露呈してしまっている。同時に、ひなたの愚痴も心の声として爆発。「小さい子供の所業や」「1個かい! 1個しか買わへんのかい!」。お釣りを手にした彼の「ふ~ん。引き算はできるんだ」というトドメの一撃に、ひなたは遠ざかっていく彼の背中へ「たぁ!」とただ斬り返すしかできなかった。
そんな屈辱を味わったひなただったが、この第72話ではさらに大きな挫折を経験することとなる。それが回転焼きへのチャレンジだ。弟の桃太郎(野崎春)が小学校に入学し、ひなたは高校3年生に。大月家が、彼女が観ていた朝ドラ『おしん』ほど貧しくはないものの、とはいえ裕福でもないことをひなたは幼い頃から感じていた。一恵(三浦透子)と小夜子(新川優愛)が進学を選ぶ中、ひなたは経済的な理由から自然と就職の道へ。だが、ひなたにはこれといってやりたいことも、どこかで働くというイメージも湧いていこなかった。ずっとこのままでいいのに。まだまだ小学生のような楽観的な考えのひなたに小夜子が提案するのが、家の仕事の手伝い。つまりは、回転焼き屋「大月」を継ぐことである。
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