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〈藤井聡太竜王 最年少で五冠達成〉タイトル挑戦に立ちはだかる永瀬拓矢二冠とは“ウマが合う” - 文春オンライン

 11日、12日に行われた第71期ALSOK杯王将戦七番勝負第4局。1日目から終盤に突入する激戦となったが、藤井聡太竜王(19)が渡辺明王将(37)に勝利、史上4人目となる五冠を最年少で達成した。「週刊文春」では、“天才少年”の強さの秘密を報じてきた。当時の記事を再公開する。(初出:週刊文春 2019年8月15・22日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)

◆◆◆

 史上最年少でのタイトル挑戦はなるか――。

 将棋界の歴史を変えることになるかもしれない対局が間もなく行われる。史上最年少(14歳2カ月)でプロ棋士になった藤井聡太七段は、デビューから29連勝、朝日杯将棋オープン2連覇など、数々の記録を打ち立ててきた。ところが、棋士の頂上決戦ともいえる8大タイトル戦では、あと一歩のところで挑戦を逃してきた。

 6月4日に行われるヒューリック杯棋聖戦の挑戦者決定戦は、藤井七段にとって最年少タイトル挑戦をかけた最後のチャンスだ。これまでの記録は、屋敷伸之九段が1989年の棋聖戦で達成した「17歳10カ月24日」での登場。藤井七段が勝てば、屋敷九段の記録を4日上回ることになる。

 ところが、最後に立ちはだかる相手は永瀬拓矢二冠。現役最強の棋士のひとりだ。二人は公式戦での対局はないものの、知る人ぞ知る互いに認め合う仲だという。「週刊文春」2019年8月15・22日号より転載する(肩書きなどは掲載当時のもの)。

今年の朝日杯将棋オープンでは、ともにベスト4に進んだ永瀬拓矢二冠(中央左)と藤井聡太七段(中央右)。藤井七段が準決勝で敗れたため、頂上決戦は実現しなかった。棋聖戦挑戦者決定戦では、勝った方が渡辺明棋聖への挑戦権を得る ©文藝春秋

将棋教室の小部屋にお忍びでやってくる藤井聡太七段

 関東某所の将棋教室では、プロ入りを目指す小学生から、駒の並べ方を覚えたばかりの女性までが、連日将棋盤を囲んでいる。

 壁一面にはプロ棋士の色紙。そのうちの一枚は、まだ子供っぽい筆運びで揮毫(きごう)された「大志」の文字。署名は「藤井聡太」だ。

 藤井聡太七段は、この将棋教室に設けられた小部屋に、月に一度ほど“お忍び”で訪れるという。

 7月19日に17歳になった藤井。数々の「史上最年少記録」を打ち立ててきた彼にとって「一つ年を重ねた」ことの意味は重い。ファンが期待する偉業の達成、つまり屋敷伸之九段が持つ「最年少タイトル挑戦(17歳10カ月)」、同じく「最年少タイトル獲得(18歳6カ月)」への残り時間が減ることを意味するからだ。

 日本将棋連盟常務理事の森下卓九段が解説する。

「豊島将之名人との竜王戦決勝トーナメント(7月23日)が大きな一局でした。準決勝進出を懸けた勝負に敗れ、最年少タイトル挑戦のチャンスは残り三棋戦。朝日杯2連覇など実力がトップクラスなのは間違いないですが、急所の一番を落とすことが残念です」

全棋士参加の一般棋戦では、史上最年少優勝の記録を持つ藤井聡太七段 ©文藝春秋

「藤井君には負けない」と目の色を変え向かってくる先輩棋士たちに加え、藤井には「世間の注目」というもう一つのハードルがある。

 飯島栄治七段が言う。

「藤井君への注目ぶりは、かつての羽生(善治)さん以上でしょう。駅で大勢のファンに囲まれ、サインを求められたこともあると聞きます。将棋以前に、彼には日常自体が本当に過酷だと思います」

 師匠の杉本昌隆八段も、

「確かに最近の藤井は少し疲れ気味かもしれません」

 と気遣う。

 そんな藤井が対局や高校通学などのタイトなスケジュールを縫い、密かに通うのが冒頭の将棋教室。小部屋で一体何をしているのか。教室の席主に聞いた。

「永瀬拓矢叡王(26)と“VS(ブイエス)”(一対一の研究会)をやっているんです。もう2年半ほど続いていますよ」

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