「私が過去、犯してしまったパワーハラスメントについて取材してくれませんか」 古澤健監督から異例の申し出があった。「話の流れ次第では批判的な記事にする」という条件で、自分は古澤監督への取材を受け入れた。 古澤健監督といえば、橋本愛や武井咲など、人気俳優の主演映画を手がけてきた監督だ。それほどメジャーな現場でハラスメント被害があったこと、しかも、加害者からの告白があったこと、いずれも驚きだった。
――具体的な状況を教えていただけますか? 古澤:『トワイライトシンドローム デッドクルーズ』も『アベックパンチ』も現場の時間や予算がない中、焦りがありました。そして、スタッフやキャストのいる前で助監督に「なんでもっと早くできないんだ」「段取りを組むのがお前の仕事だろう」「自分で考えて動けないのか」などと暴言を浴びせてしまったんです。 助監督は与えられた時間の中で精一杯努力していたはずなのに、僕はそれ以上を不当に求め、人格を否定するような罵倒をしていました。僕は黒沢清監督のもとで助監督をしていた経験があって、とても穏やかな現場を見ていたんですよね。だから黒沢監督をお手本にしようとしていたのに、いざとなると自分は権威をふりかざし暴言を吐く典型的な加害者になっていました。 ――衝動的に相手を怒鳴ってしまったのでしょうか? 古澤:最初はそうでした。そして一度怒鳴ってしまうと、たががはずれてしまい、常にあたりちらしているような状態になってしまいました。『トワイライトシンドローム デッドクルーズ』では実際に航行している船の上で撮影をしたんですけど、陸地を映してはならない内容だったんです。だから、撮影できる時間が限られていました。 当時のスケジュールを見返していたんですが、ある日の予定表には『船の出発が22時半、テスト開始が朝6時』とあります。そして、その日に撮影しなくてはならない脚本のページ数が26ページ(※)。脚本全体の約3分の1です。当然その日は10ページ以上撮りこぼしています(というか物理的に絶対に撮れるはずのないスケジュールが組まれていました)。 (※注釈:脚本の目安は1分で1ページほど)
正直、加害者側が自らの罪を告白することに対し、「保身」「自己弁護」と捉える向きはあるだろう。この記事自体が被害者への二次加害になるかもしれないし、そう思う読者を自分は否定できない。 それでもこの記事を書いたのは、商業映画の第一線で活躍している監督が、ハラスメントの行われた状況を詳しく語った事例はあまりにも少ないからだ。2022年に入り、毎日のように問題が発覚している映像業界。その現場で何が起きているのか。対話から見えてきたハラスメントの引き金は「個人の資質」「過酷な労働環境」「問題への無知」の3つだった。
パワハラを告白する理由
――日本映画界では今年に入ってから、監督、俳優、プロデューサーたちのハラスメント、性的搾取が次々に告発されてきました。そのような中、なぜご自分から、ハラスメントの告白をしたいと思われたのでしょう? 古澤健監督(以下、古澤):僕は日本映画に関わるものの一人として、制作現場からハラスメントをなくしたいと思ってきました。しかし、そういう自分でもハラスメントをしてしまった過去があります。参考例として、みなさんに聞いてほしいと思いました。また、単に告白するだけでは自己欺瞞が含まれてしまうと思うんですね。だから、石塚さんに厳しく分析してもらえればと考えています。 ――では、監督が犯してしまったハラスメントの経験を話してもらえますか? 古澤:監督作、『トワイライトシンドローム デッドクルーズ』(2008)『アベックパンチ』(2011)でスタッフを怒鳴りつけ罵倒してしまいました。また、『アナザー Another』(2011)『クローバー』(2014)の現場でも、演出部に不機嫌な態度をとる、黙り込んで相手に圧力を与えるというハラスメントを行いました。権威をふりかざし暴言を吐く加害者に
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