水島新司さんの登場まで、野球漫画の代表格は「巨人の星」(原作・梶原一騎、作画・川崎のぼる)だった。この作品に限らず、1970年代初めまで、野球漫画の中心は“魔球”だった。
これに「ウソの世界。野球にくわしい人が見るとついていけない」と反発したことが、リアルな野球漫画一筋に邁進(まいしん)するきっかけになったという。取材や知識を駆使してチームワークの妙や高度な心理戦を試合運びに持ち込み、野球のみならず、スポーツ漫画ジャンルに革命を起こした功績は大きい。
現実のプロ球界に与えた影響も計り知れない。「あぶさん」で、景浦安武は野村克也監督の南海ホークス(当時)に入団し、パ・リーグの存在感を高めた。「野球狂の詩」では、当時のプロ野球協約で認められていなかった女性プロ投手・水原勇気をマウンドに立たせた。後に協約は改正され、2008年、独立リーグに女性プロ選手が誕生した。水島さんが創造した名キャラクターたちには現実を変えるほどの力があった。
いつも明るく、前向きで、健康的な画風だった。貸本時代に「劇画」に影響を受けた線は70年代に洗練され、投打の躍動感を生き生きと描き出した。野村監督をして「プロのスイングが描けるようになった」と言わしめたことは、水島さんの勲章だっただろう。(編集委員 石田汗太)
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