昨年11月9日に99歳で亡くなった作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん。本紙連載エッセー「寂聴 残された日々」などの執筆を続けた最晩年の思い出を、秘書の瀬尾まなほさんに寄稿してもらった。
いつかは来る別れの日がこんな急にくるなんて……。瀬戸内寂聴先生との別れは、急なことであった。近親者のみの密葬、京都・寂庵(じゃくあん)での偲(しの)ぶ会、天台宗の本葬、そして先日四十九日を無事に済ませた。
忙しくしている最中、「悲しむ余裕も暇もない」と嘆いていたけれど、ひと段落ついた今は逆に、落ち着かない。忙しさを理由に、先生が死んだという事実から私は目を背けていた。そのことを真正面から受け入れてしまえば、たちまち自分自身が深い悲しみの沼へと沈み込んでしまい、そこから一生這(は)い上がれない気がしたからだ。
事実と向き合うのは後にして、とやるべきことに集中していても、時々泣きたくなると気を紛らわし、平気なふりを続けている。こんなに忙しくなったのは先生が亡くなったからなのに、先生が亡くなったことを認めたくない自分が今もいる。
先生は9月末に風邪をこじら…
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